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秋本 なお

神戸市出身。婦人靴デザイナーとして修行中。元・神戸国際松竹スタッフとして、長年映画館に親しむ。

映画館が好きだ。ひとつの作品を、知らない人たちと一緒に観る。なんてすてきな空間だろう。知らない人たちは、自分と違う価値観で映画を観ている。だから、笑うポイントも、泣くポイントも、劇場を出るタイミングも違う。
 昔、人間のおぞましさを感じる映画を観ていた時、なんとも不快なシーンで後ろのオッちゃんが笑い出した。ここで?!わたしびっくり。逆に、価値観が違う人たちが同じシーンでいっせいに笑ったりもする。そういうのも嬉しい。
 良い環境で、のめりこむように映画を観れるのも映画館の魅力だろう。だけど、知らない人たち同士が、ひととき空間を共有して違う反応や同じ反応をできるのも、映画館のすてきなところだと思う。ああ、映画館に行きたい。

②『ニューヨークの巴里夫』

 三部作の完結篇として観ると、成長しているのかいないのかわからない主人公。だけどよーく考えると自分だってそんなもの。
迷ったり間違えたり学生時代はそんなこと当たり前だと思っていて、でもきっと「大人になれば」なんて希望を抱いていたのに、いざなってみたらアレレおかしいぞ?
 この作品を観ながらグザヴィエ(主人公)を愛おしく感じるほど、なんだか自分の人生も愛おしくなってくる。予想外、だから人生って面白い!

③『パイレーツロック』

 船の上には個性豊かなDJたち(+α)。スタイルはバラバラ、だけど揺るぎない共通点は”みんなラジオを愛してる”。

 海の真ん中で、ハイテンションなジングルと60年代の音楽に乗せて、いざこざもトラブルも失恋も、最後にはぜんぶ笑い飛ばしてしまえ!この船に乗ったらきっと毎日が楽しくて、きっと毎日が大変なんだろう。

 だからわたしはおとなしく、映画館の最前列で彼らのラジオに耳を傾けます。船酔いもするしね。

④『ヴィオレット ある作家の肖像』

 ヴィオレット・ルデュックという作家を知っていますか?
 インターネットで調べてみてもほとんど何も引っかからない。小説のタイトルも聞き覚えがあるような、ないような。
 そんな彼女の半生を7つの章で描いたこの作品は、孤独と執着、チャンスと失望、そして才能に溢れていて、良くも悪くも鑑賞後はぐったり。嵐のような性格のヴィオレットにヘトヘトになりながら、それでもラストシーンは微笑んでしまう。
 週末はぜひ、彼女の本を読んでみよう。

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