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永井 純一

神戸山手大学現代社会学部講師 

10月に初の単著『ロックフェスの社会学 ——個人化社会における祝祭をめぐって』を上梓しました。

①『スーパーローカルヒーロー』

 好きなことだけをして生きたいと誰もが願うことだろう。尾道市のレコード屋「れいこう堂」の信恵さんは、きっとそんな人生を送っている。避難民・移住者のサポートや手作りライブに奔走する姿、その迷いや躊躇のなさがそれを物語っている。でも実はそんな生活は案外地味なものかもしれない。どう見てもちょっと変わったおっちゃんの日常でしかないのだ。でもその周りにはたくさんの笑顔と音楽がある。その距離感がなんとも絶妙で、やっぱうらやましいと思う。

②『ジャージーボーイズ』

 「オッサンが泣く映画」として知人から強く勧められた。内容的には60年代初期にヒット曲を連発したフォー・シーズンズの伝記的ミュージカル。ストーリーはベタだが、随所に散りばめられた名曲達の甘酸っぱさにやられた。50年も前の曲なんて知らないと思いきや、けっこう知ってる曲がある。音楽はもとの文脈から切り離されることで、時代を超えたスタンダードになるのだ。そして、そこから逆行してその曲の意味やそれがつくられた社会背景を知ることはとても楽しい。そんな音楽映画のお手本のような作品。

③『戦場ぬ止み』

  映画を観て、必ずしもいい気分にならなくてもいい。『アメリカン・スナイパー』はしっかりと後味が悪い、という意味でいい戦争映画だと思う。沖縄辺野古の基地建設に反対する人びとを描いたドキュメンタリー映画『戦場ぬ止み』もなかなかの後味だ。もちろん誰もが基地に反対しているわけではないが、それゆえに沖縄は分断されてしまっている。お互いにもうやめたい、次の世代にバトンを渡したくないのにやめられない。新しい知事が誕生しても事態は収束に向かう気配すらみえない。その感想をひとことで言うなら「悔しい」だ。

④『マッドマックスー怒りのでスロード』

 映画のみかたはひとつではない。俳優が格好いいとか、ロボットや乗り物が格好いいとか、出てくるアイテムや設定が面白いとか映画をみる時のポイントはたくさんある。もちろんストーリーは外せない要素、そう考える人は多いだろう。

 しかし『マッドマックス—怒りのデスロード』に、ストーリーはあってないようなものだ。「はじめてのお使い」と同じで行って帰ってくるだけ。ただそれだけの話を、個性的なキャラクターによる途切れることのないアクションで最後まで魅せる。それでここまで面白くできるのかと感動した。その興奮はロックのライブに近い。絶対に映画館で爆音みるべし。

⑤『キングスマン』

 クールでスタイリッシュなオシャレ映画。こじゃれた気分でニヤニヤしながら見ることを期待してたら、見事に裏切られました。これ、おバカ映画ですよ。

 もちろんスパイ映画のお約束や小ネタ満載で、そのこと自体をコリン・ファースとサミュエル・L・ジャクソンが話すメタ的な要素もあるですが、それ以上に、とくに後半は悪ノリに次ぐ悪ノリ。ほとんどバトルマンガのような展開で、さながら『ワールド・ウォーZ』のようなまさかの力業でもっていかれる。2時間前にはこんな気分になるなんて思いもしなかったよ。エンターテインメント性が高くて、本当に痛快です。ということをふまえて、もう一回みます!

⑥『バッド・ブレインズ/バンド・イン・DC』

 ハードコア・パンクの雄にして、ミクスチャー・ロックのオリジネイターであるバッド・ブレインズ。黒人のパンク・バンドで演奏はめちゃ上手くて、レゲエに傾倒してっていう、よく考えると、いやよく考えなくても相当に変なバンド。そして、フロントマンでボーカルのH.R.はとびっきりの変人。だけど、こういうバンドに限って他のメンバーやマネージャーは案外まともでいい人だったりする。そんなバンドの人間模様をみていて面白くない訳がない。
 劇中でインタビューにこたえる彼らに影響を受けた面々も、レッチリのアンソニーやフーファイターズのデイブ、ヘンリー・ロリンズをはじめ、かなり個性的だが、やっぱりH.R.がダントツで変だ。そういえばアダム・ヤウク(ex.ビースティ・ボーイズ)の姿はもう見れないんだなぁ。

⑦『エルストリー1976』

「スター・ウォーズはオレの人生だ」という人は時々いるが、本作は本当にスター・ウォーズ(1作目)に出演した人々のドキュメンタリー映画。ただし出演したといっても、皆ほとんどエキストラでヘルメットや着ぐるみを被っていて、しかも登場シーンは数秒とか1カット。それでも、あれだけ凄い映画に出ていることには違いないし、それぞれの人生の一部になっている。

そもそもスター・ウォーズの魅力のひとつはモブキャラクターだし、そこを語らずしてスター・ウォーズを、いや人生を語れようか。メインキャラクターはもちろんだが、端役にも人生がある。DVDを引っ張り出して、誰がどこに出ているかをチェックしつつ、名も無きトルーパー達に思いを馳せてみる。

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